元厚生事務次官連続襲撃事件について

2008/11/20 02:23

 

11月18日、さいたま市、および東京都中野区の元厚生事務次官宅が連続的に襲撃されるという事件が起きた。一度目のさいたま市の事件では、元厚生事務次官の山口剛彦氏と彼の妻二人が刺殺され、二度目の中野区の事件では、元厚生事務次官吉原健二さんの妻が重傷を負った。凶器は二回とも刃物であり、襲撃方法は宅配便の配達を装うというものだった。

 

確かにこれはテロと言えるだろう。次官の住所をわざわざ調べ出し、襲撃方法も事前に準備しておくなど相当に用意周到な面がみられ、綿密に計画を立てていたことがわかる。このことから、官僚組織に対する逆恨みは相当強いものがあると窺える。恐らく、年金記録問題などの不祥事で個人的な被害を受け、そのため官僚組織に対する天誅のつもりで実行したのだろう。しかし、周辺の住民に目撃される恐れが高い宅配員を装うという襲撃方法をとっており、さらに二度目の事件では本来の標的であるはずの元事務次官の襲撃に失敗していることから、犯人は明らかにプロではない。元事務次官宅襲撃が二度も同じ手口で続き、一連の事件が元厚生官僚を狙った同一犯によるテロとわかった今、犯人はこれ以上の犯行に及ぶことはできないだろう。また、そう遠くないうちに犯人は突き止められるだろう。

それにしても愚かなことをしたものだ。このようなことをしても何も良くなりはしないというのに。

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マケイン敗北に見るアメリカの危機

2008/11/17 00:31

 

米国時間11月4日、民主党候補バラク・オバマ上院議員が共和党候補ジョン・マケイン上院議員に対して地すべり的勝利を収め、長かったアメリカ大統領選についに終止符が打たれた。この結果は、前回の私の記事における予測を見事に覆すものとなってしまった。

 

今回の結果は、マケインに対するNOというより、共和党政権の続行そのものに対する拒否姿勢の表れだったことは明らかである。

 

マケインはもともと共和党内でも穏健・現実的姿勢を貫く一匹狼として知られており、その軸足は保守本流というよりもリベラル・中道派の方に傾いている。そのため彼は幅広い支持を集められるはずだった。

 

だが、共和党の支持層には彼とは違い、未だに時代遅れのスローガンやイデオロギー、現実を無視した観念的価値観を重視する保守強硬派が多い。

 

たとえば、第1期ブッシュ政権下でイラク戦争を主導したネオコンなどが代表例だ。よく、あの戦争はイラクの石油権益を手に入れるための国益追求のための戦争だったといわれるが、それはアメリカ政治を全く理解していない者が、いかにももっともらしく言う言い分に過ぎない。もし現実的に国益を追求しようとしたら、あのようなリスクの高い戦争はできなかったはずだ。彼らネオコンは、他国に民主主義を広めることによって世界の安全を守るという、ひとりよがりな正義を確信していたために、アメリカのあのような戦争に突入させてしまったのだ。あのような国益を損ねるリスクの高い行為は、自らを正義と確信し、そのためには多少の犠牲もやむを得ないと考える人間にしかなしえない。結局ネオコンは、現実を見ずに自らの独善的な価値観を信じたために、アメリカの国際的地位を大きく低下させてしまった。

 

また、リーマン・ショックをきっかけに雪崩を打つように拡大した金融危機に対処するため、ブッシュ政権が提案した緊急金融安定化法案を下院で握りつぶしてしまったのも、共和党内の強硬派である。彼らは目の前の現実の問題を解決することよりも、共和党の伝統的な価値観である市場原理主義を貫くことに固執した。その結果、ドルの暴落に伴うアメリカの威信の低下と世界中に広がる金融恐慌をストップするチャンスを失ってしまったのである。

 

最後に触れなければならないのが、現大統領ジョージ・ブッシュを当選させる大きな力となったキリスト教右派である。彼らはキリスト教の伝統的価値観を守ることばかりに固執し、そのためには進化論のように科学的に実証された理論すら否定することをためらわない。

 

このように自分の価値観を守ることばかりに固執し、異なる意見の持ち主との対話を一切行わない人々が多く存在するというのは、アメリカの民主主義が危機に陥っていることを意味する。なぜなら、現実の問題に対して、異なる意見の持ち主と、論理的な議論を通して建設的な結論を出していくというのが、民主主義のエッセンスだからだ。

 

本来は立場的にはマケインに近いはずの共和党員のコリン・パウエルがあえて民主党候補のバラク・オバマを支持したのもこのような保守強硬派に強い危機感を抱いたからに違いない。アメリカ国民の多くも、マケインというよりもこのような現実に基づいた論理的な対話を拒否する保守強硬派に対してNoを突きつけたものと思われる。

 

世界で最も開かれているはずのアメリカの民主主義が、危機に陥っている。

 

 

 

 

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本命はマケインか

2008/11/02 00:12

 

長かったアメリカ大統領選の決戦まで、あと一週間を切った。マスコミの報道を見ていると民主党バラク・オバマ上院議員が圧倒的に有利な印象を受けるが、実際のところはどうなのだろうか。

 

この選挙の行方を占うためには、まず今のアメリカにどのようなリーダーが必要とされているかを考える必要がある。私が考える、次期大統領に必要とされる要素は以下の2つである。

 

1.イラク戦争をめぐって分裂状態に陥ったアメリカを、再びひとつにまとめる能力

2.イラク戦争の失敗によって失墜したアメリカの国際的信頼を取り戻すことの出来る能力

 

この2つの要素をどちらの候補がより多く備えているかを考えることで、この選挙の結果を予測することが出来る。結論を言えば、私はジョン・マケイン上院議員が今回の選挙戦を制するだろうと考えている。その主な論拠は以下の通りである。

 

1.マケインの党派にとらわれない豊富な議員活動の実績

2.マケインの外交・安全保障に関する中道・現実的姿勢

3.サラ・ペイリン副大統領候補によるマケイン陣営の支持層の拡大

4.アメリカ内陸部の保守層が選挙結果に与える影響力

 

では、それぞれの点について詳しく見てみよう。まずは、マケインの豊富で超党派的な議員活動である。

 

日本のテレビ報道に接していると、マケインはブッシュ政権の強力な支持者という印象を受けるが、実際にはマケインは共和党穏健派を代表する重鎮であり、リベラルともいえる姿勢で有名だ。例えば、保守派にとっては絶対タブーであるはずの妊娠中絶に関しても、母体に危険がある場合などについては容認するなど、柔軟で現実的な姿勢を示している。また、しばしば共和党政権に対する批判も躊躇なく行うため、「一匹狼」の異名をとっている。

 

その一匹狼的姿勢は、彼のこれまでの立法活動に現れている。まず、9・11の直後には、民主党の大物議員ジョセフ・リーバーマンと共同で9・11調査委員会の設立を定めた法案を提出、成立させ、また同じく民主党の大物議員ラッセル・ファインゴールドと共同で、本来共和党の支持層であるはずの大企業による政治献金を規制する法案を成立させた。

 

特筆に値するのが、2005年に民主党リベラルの代表格、エドワード・ケネディ上院議員と共同で、不法移民問題に関する法案を提出したことだ。この法案は結局保守派議員の賛成を得られず廃案となったが、不法移民の合法化も含めるなどかなりリベラルな内容に踏み込んだものだった。しかも、エドワード・ケネディといえば予備選段階からオバマ支持を表明していた、最も有力なオバマ支持者の一人である。

 

このような超党派的な活動が、幅広い層から票を集めることが期待される。マケインは、私が挙げた次期大統領に必要とされる能力、「アメリカを再びひとつにまとめる」ことを、実際の行動をもって示している。それに対してバラク・オバマは、国内の融和を訴えるその巧みなスピーチで人気を集めているが、上院議員としてのキャリアは4年に満たない。そしてその半分は今回の大統領選キャンペーンに費やしており、自ら法案を書いたことは一度もない。確かにオバマはアメリカを再びひとつにまとめるカリスマを感じさせるが、まだそれを実際の行動で示しているわけではない。

 

次に、マケインの外交・安全保障に関する現実的・中道的姿勢についてみてみよう。マケインはしばしばイラク増派を主張しているため、ブッシュ政権よりさらに強硬なイラク戦争支持者のような印象を受けるかもしれない。しかし、マケインのこの主張は、ブッシュ政権の派遣する兵力ではイラクの安定をもたらすことは不可能であるという現実的な判断からきている。マケインはイラク戦争を主導したネオコンのように、イラクの民主化という非現実的な目標は抱いてはいないし、イラク国民はアメリカ軍を歓迎するだろうという希望的観測も抱いていない。ネオコンはそのような希望的観測を抱いたためにイラク戦争に突入してしまい、さらに少数兵力でもイラクの安定化は十分可能であると考えたがために現在のイラクの混乱を招いてしまった。結局ネオコンは自らの理想を実現するためにはアメリカの国益を損ねても構わないという高邁な正義感から、どう考えても無謀なイラク戦争に突入してしまった。たが、マケインはあくまでも国益重視の現実派である。国益追求というと力の論理を重視するため、強硬派という印象を受ける。だが実際はマケインのような国益重視の現実派は、決して無謀な戦争はしない。

 

前述したように、次期大統領に要求される第二の能力は、アメリカに対する国際的信頼を取り戻せる能力である。イラク戦争によって失墜したアメリカの国際的地位を再び取り戻すには、中東情勢を混乱させないようにしながらイラクから撤退するしかない。そのためにはイデオロギーにこだわらない超現実的な判断が要求される。もし仮にイラクからの即時撤退をすれば、中東情勢は今以上の混乱に陥るだろう。また、ブッシュのようにイラクの民主化という非現実的な目標を追い続ければ、アメリカ軍はいつまでもイラクから撤退することができず、泥沼にはまり込んでしまう。

 

イラク戦争の失敗によって、アメリカ国民はネオコンのような、自らが正義だという思い込みの激しい政権は信用できないということに気づいた。同様に反戦運動的な思い込みの激しい左派政権も、アメリカ国民の信頼は得られないだろう。次期大統領に要求されるのは、マケインのように、イデオロギーより国益を重視する現実的判断が出来る能力である。外交・安全保障政策に関する現実的な判断力については、平和主義的な印象のあるオバマより、マケインのほうに軍配が上がる。

 

次に、サラ・ペイリン副大統領候補によるマケイン陣営の支持層の拡大についてみてみよう。前述したようにマケインは共和党員とはいえ、非常にリベラルで柔軟な感覚の持ち主だ。そのため穏健・中道派からの支持は強い一方、伝統的な共和党支持層である保守本流からの反発は強い。それに対して副大統領候補に指名されたサラ・ペイリンは、保守層からの人気が高い。これによってマケイン陣営は保守本流層から穏健派層まで幅広い支持を得ることが出来る。

 

さらに、ペイリンは4人の大統領・副大統領候補の中で、唯一アラスカ州知事としての行政経験があるという事実も大きい。アメリカの州は自律性が非常に高く、国防・外交以外の全ての国家機能を持っている。そのため州知事職は非常に豊富な内政経験を積むことが出来る。歴史的にも、上院議員から大統領になるケースよりも、州知事から大統領になるケースのほうが圧倒的に多い。そのため、外交・安全保障に関する造詣の深いマケインと、州知事職による内政経験のあるペイリンは、理想的なペアとなるだろう。

 

一方、オバマは、人々の共感を呼ぶスピーチで人気を誇っているものの、その経験の浅さが懸念されている。そのため副大統領候補には、1973年以来議員を務め続け、上院司法委員会委員長、上院外交委員会委員長という重職を歴任したジョセフ・バイデン上院議員を副大統領候補に指名した。しかし、この選択によって、変化と革新の象徴というオバマの新鮮で若々しいイメージが多少ながらも損なわれた。また、オバマもバイデンも同じ民主党中道派を代表する議員であるため、支持層の拡大もあまり期待できない。

 

そして、決して無視できないのが、アメリカ内部の保守層が大統領選挙に与える影響である。この影響は2000年、2004年の大統領選に大きく現れている。アメリカの内陸部は、沿岸部の発展から取り残されているが、そこに住んでいる人々はそれを政府の責任とするつもりはない。内陸部に住む保守層は、開拓期のフロンティア精神を受け継いでおり、基本的に自分のことは自分で守るという自己責任の信念を持っている。医療制度に関しても、国民皆保険を導入して医療が安くなっても、それによって待ち時間が長くなることを望まない人が多いようだ。その点を考えれば、民主党陣営が彼らのフロンティア精神に訴えかけるヴィジョンを示せない限り、共和党から政権を奪還することは難しいだろう。

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米が北朝鮮テロ指定解除へ - 拉致問題は日本自身の手で解決を

2008/07/02 23:41

 

 アメリカのブッシュ大統領は26日、北朝鮮の核申告を受け、北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除を議会に通告した。北朝鮮の核申告は、本来の期限から半年以上も遅れたにもかかわらず、テロ支援国家指定の解除への流れは決定的なものとなった。ブッシュ政権は、2002年1月29日の一般教書演説で北朝鮮イランイラクとともに「悪の枢軸」と名指しで非難した当初の姿勢とは、180度その態度を翻した形となった。

 このアメリカの動きの裏には、上記の「悪の枢軸」に対する戦いの一環であったイラク戦争が予想外の行き詰まりを見せたことに加えて、2006年10月に北朝鮮が核実験を成功させたことによってアメリカの利害が北朝鮮情勢から直に影響を受けるようになり、当初の対北政策を大きく変更せざるをえなくなったことが挙げられる。

 ブッシュの当初の戦略では、イラク戦争でアメリカの圧倒的な力を見せることによって北朝鮮に無言の圧力をかけ、さらにその後も金融制裁などの継続的な圧力をかけることによってクーデターなどを誘発し金正日体制を崩壊に追い込むつもりであったと私は見る。ところが、イラク戦争の占領政策に全注力を注ぎ込まざるをえなくなったためにその戦略は中途半端なものになり、その中途半端な圧力は却って北朝鮮に核開発を急がせる結果になった。

 アメリカにとって、北朝鮮の核自体はそれほど大きな脅威ではない。だが、それがアルカイダなどの国際テロ組織やイスラエルの抹殺を本気で主張しているイラン強硬派の手に渡ることは、アメリカの国益や世界戦略に対する直接的な脅威となるため、アメリカにとって死活的問題となる。

 現在のアメリカの対北政策の最優先課題は、北朝鮮をうまく手なずけ核放棄を実施させることになっている。そのため、今のアメリカには北朝鮮の圧政や拉致問題に取り組む余裕などないというのが実情だろう。ブッシュ大統領はテロ支援国家指定解除を表明した後も、たびたび拉致問題について言及しているが、それは日本に対するリップサービスに過ぎない。本来ブッシュ金正日のような独裁者を心底嫌っているはずだが、今や下げたくもない頭を下げて核放棄を確実にしようとしている。

 だが、アメリカにとっての最優先事項が何であろうとも、日本にとっての北朝鮮問題の最優先事項は拉致問題であるはずだ。日米同盟が拉致問題解決に何らの寄与もしないのであるはならば、日本が独自に動いて拉致問題解決を目指すしかない。国家の存在理由が国民の生命と財産と守ることである以上、日本は国際情勢の如何に関わらず拉致問題解決を徹底的に追求していかなければならない。

 最近、このことに関連して新たな動きがあった。6月13日、北朝鮮が日朝実務者協議において拉致問題の再調査を約束したことを受け、日本側は制裁措置の一部解除に踏み切った。交渉において、圧力一辺倒では相手側をますます硬化させることになり、相手側の譲歩を得られなくなってしまうため、日本政府のこの判断は基本的には正しい。

 だが、日本人拉致は金正日自身の指示によるものだった可能性が高いため、再調査が完璧に行われることはおそらくありえないだろう。実際に北朝鮮は拉致問題に関して何度も虚偽の申告をしてきた。また、北朝鮮は自身が引き起こした国際的問題の解決と見返りに援助を要求するという瀬戸際外交を常套手段としており、拉致問題もそのために利用されている可能性もある。そのため日本は、拉致問題の解決に向けた国の意志を北朝鮮側にはっきりと示すために、北朝鮮が再び今回の再調査で虚偽報告を行ったときに備えて様々な手を打っておくべきだ。

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韓国の反政府デモに北朝鮮の影

2008/06/18 23:54

 

 米国産牛肉輸入制限緩和をめぐって連日続いていた韓国の反政府デモは、ようやく収束に向かいつつあるようだ。盧武鉉政権の下で悪化した韓国経済の再生を期待された「経済大統領」として圧倒的大差で大統領選に勝利した李明博だったが、このデモをきっかけとして支持率は20%台まで急落、全閣僚が辞意を表明するなどの大混乱となり、「未来志向」、「実用外交」を目指した新政権は発足100日にして窮地に陥っている。

 そもそも混乱の発端となった米国産牛肉の輸入制限緩和問題は、米韓自由貿易協定(FTA)の批准に関する米韓交渉から出てきたものである。そしてそのFTAの締結に向けた交渉を開始し、2007年4月3日の締結合意にまでこぎつけたのは前政権の盧武鉉政権だった。それにも関わらず、新政権発足からわずか数ヶ月でこのような大規模騒乱が起きたのは、単なる国民の意思表示というだけでなく、裏に何かあったからだと考えるほうが自然だ。その裏で糸を引いているのが、北朝鮮である可能性は非常に高い。

 今回のデモはそのきっかけこそ米国産牛肉問題であったが、最終的にはデモの内容はそれにとどまらず、李明博大統領の退陣を求める大規模な反政府デモにまで発展した。その理由のひとつが、「韓国人は牛海綿状脳症(BSE)にかかりやすい」「李明博は日本に独島(竹島韓国名)を売り渡した」「李明博BSEにかかった牛肉を輸入して韓国人を殺そうとしている」などといった荒唐無稽なデマがインターネット上で飛び交い、それが中高生の間に広まり、多くの中高生のデモへの参加を促したことである。このような出所不明のデマは、諜報の世界で「ディスインフォメーション」といわれる工作で頻繁に使われる。

 北朝鮮は2007年の大統領選開始前から、韓国の保守政党ハンナラ党が政権を握れば「わが民族が核戦争の惨禍を被ることになるのは自明だ」として同党を非難する声明を発表し、韓国大統領選に露骨に干渉する姿勢を示した。また、ハンナラ党李明博が大統領に就任して以降は、3月25、26日および5月30日に黄海への短距離ミサイルを発射、4月1日に李明博大統領を名指しで非難するなど、李政権に対する揺さぶりをかけている。

 現在の国力差および国際関係からすれば、北朝鮮が本気で戦争を考えている可能性はないと見てよい。むしろこれは、反北・親米日姿勢をとる李政権に対する警告と見るべきだ。そしてその警告を実行に移した結果が、今回の大規模な反政府デモだったと見ることができる。

 その反政府デモも収束に向かいつつあるが、北朝鮮にとっては十分満足な結果が得られたと見てよい。全閣僚が辞意を表明するほどの政治的混乱になった以上は、これまで反北・親米日姿勢から多少なりとも転換せざるを得ない。北朝鮮からのメッセージは李政権に十分に伝わったはずだ。

 このような心理戦は、北朝鮮の専売特許ではない。世界中のほとんどの国が、相手国の世論を自国に有利な方向に誘導するために、多かれ少なかれ心理戦を用いているというのが実情だ。心理戦を有効に使っていないのは、主要国では日本ぐらいではないのだろうか。日本が世界の外交舞台で負け続けなのは、この理由も大きいだろう。世界の動きを見通すときにはこのような現実も踏まえて、物事の本質を見抜く必要がある。

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