アメリカのブッシュ大統領は26日、北朝鮮の核申告を受け、北朝鮮に対するテロ支援国家指定の解除を議会に通告した。北朝鮮の核申告は、本来の期限から半年以上も遅れたにもかかわらず、テロ支援国家指定の解除への流れは決定的なものとなった。ブッシュ政権は、2002年1月29日の一般教書演説で北朝鮮をイラン、イラクとともに「悪の枢軸」と名指しで非難した当初の姿勢とは、180度その態度を翻した形となった。
このアメリカの動きの裏には、上記の「悪の枢軸」に対する戦いの一環であったイラク戦争が予想外の行き詰まりを見せたことに加えて、2006年10月に北朝鮮が核実験を成功させたことによってアメリカの利害が北朝鮮情勢から直に影響を受けるようになり、当初の対北政策を大きく変更せざるをえなくなったことが挙げられる。
ブッシュの当初の戦略では、イラク戦争でアメリカの圧倒的な力を見せることによって北朝鮮に無言の圧力をかけ、さらにその後も金融制裁などの継続的な圧力をかけることによってクーデターなどを誘発し金正日体制を崩壊に追い込むつもりであったと私は見る。ところが、イラク戦争の占領政策に全注力を注ぎ込まざるをえなくなったためにその戦略は中途半端なものになり、その中途半端な圧力は却って北朝鮮に核開発を急がせる結果になった。
アメリカにとって、北朝鮮の核自体はそれほど大きな脅威ではない。だが、それがアルカイダなどの国際テロ組織やイスラエルの抹殺を本気で主張しているイラン強硬派の手に渡ることは、アメリカの国益や世界戦略に対する直接的な脅威となるため、アメリカにとって死活的問題となる。
現在のアメリカの対北政策の最優先課題は、北朝鮮をうまく手なずけ核放棄を実施させることになっている。そのため、今のアメリカには北朝鮮の圧政や拉致問題に取り組む余裕などないというのが実情だろう。ブッシュ大統領はテロ支援国家指定解除を表明した後も、たびたび拉致問題について言及しているが、それは日本に対するリップサービスに過ぎない。本来ブッシュは金正日のような独裁者を心底嫌っているはずだが、今や下げたくもない頭を下げて核放棄を確実にしようとしている。
だが、アメリカにとっての最優先事項が何であろうとも、日本にとっての北朝鮮問題の最優先事項は拉致問題であるはずだ。日米同盟が拉致問題解決に何らの寄与もしないのであるはならば、日本が独自に動いて拉致問題解決を目指すしかない。国家の存在理由が国民の生命と財産と守ることである以上、日本は国際情勢の如何に関わらず拉致問題解決を徹底的に追求していかなければならない。
最近、このことに関連して新たな動きがあった。6月13日、北朝鮮が日朝実務者協議において拉致問題の再調査を約束したことを受け、日本側は制裁措置の一部解除に踏み切った。交渉において、圧力一辺倒では相手側をますます硬化させることになり、相手側の譲歩を得られなくなってしまうため、日本政府のこの判断は基本的には正しい。
だが、日本人拉致は金正日自身の指示によるものだった可能性が高いため、再調査が完璧に行われることはおそらくありえないだろう。実際に北朝鮮は拉致問題に関して何度も虚偽の申告をしてきた。また、北朝鮮は自身が引き起こした国際的問題の解決と見返りに援助を要求するという瀬戸際外交を常套手段としており、拉致問題もそのために利用されている可能性もある。そのため日本は、拉致問題の解決に向けた国の意志を北朝鮮側にはっきりと示すために、北朝鮮が再び今回の再調査で虚偽報告を行ったときに備えて様々な手を打っておくべきだ。


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